麺処まるは長谷川さんへの手紙 | 大盛上等!ダイエット挫折日記 in 札幌

麺処まるは長谷川さんへの手紙

「北海道らしい気持ちのいい朝ですね」
「そうですねぇ」

あの日の札幌は快晴では無いものの、湿度が低く、穏やかな風が気持ちの良い日でしたね。

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二人で空を眺めながら、呑気に話をしたんだよね。
お互いに目を合わせるでもなく、腕組みして前を見ながらポツリポツリとね。

これから戦場のような忙しさがやってくることはわかりきっていたのだが、そんな事がウソのようにのんびりと会話を交わしていたよね。

「ついにここまで来ましたね」
「そうですね。北海道でつけ麺のイベントが開かれるなんて・・・感無量ですね」

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2010年6月に札幌の大通公園で開かれたさっぽろ大つけ麺博、第2幕の開幕の日の朝の出来事でしたよね・・・。
随分昔のことのようにも思いますが、わずか3年前のことなんですね。

あの時の気候と似た季節になったせいか、二人してそんな話をした事をなんだかこのところよく思い出してしまいます。

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長谷川さん。

あれは、2007年の春でしたよね。
長谷川さんの作る細麺の「つけそば」を食べて、ちょっとだけ不満を感じてた私は何気なく当時東京で人気急上昇中だった"浅草開化楼"という製麺所の麺の話をしましたね。

その時長谷川さんは
「所詮、麺ですよね・・・」
と意外な答えを言ったのを覚えていますか?

続けて
「私はもっともっとスープに磨きをかけたい!」
と仰ったように記憶しています。

実はあの時私はかなり意地になっていたんですよ(笑)
(絶対長谷川さんに美味しい麺を食べさせてやる!)ってね。

次の東京出張の時に頼み込んで浅草開化楼の麺を分けてもらったんだよ。
そして、そのまますぐに長谷川さんの店に行き
「これでつけ麺を作って!」
と無茶を言ったんだよね(^^;;



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今考えると無茶なことを言いましたよね。
すみません・・・。

でも、その麺を食べた長谷川さんも期待通り・・・いや、期待以上に驚いてくれましたよね。

正直私はそれで満足したんです。
長谷川さんの鼻を明かしてやった・・・ってね(^^;

でも、実は長谷川さんのすごさはそこからだったね。
その日のうちに長谷川さんからメールで
「浅草開化楼を紹介してください!」
と連絡が来て、その日のうちに空輸で麺を取り寄せることを決めちゃったんだよね。

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「マンボウさん!すごいのができました。」

連絡が来たのはそれから数日しか経っていなかったですよね。

食べたつけ麺はお世辞抜きに本当に素晴らしく美味しいものでした。
麺の美味しさはもちろんわかっていたが、格段に進歩したスープの美味しさ・・・。
正直「舌を巻く」というはまさにこのことだと思いましたよ。


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その後食べるたびに進化し続けたつけ麺・・・。
そろらく「毎日」試行錯誤を繰り返し、「毎日」進化させ続けていたのでしょうね。

そして、その麺を食べに来た麺eijiの古川店主、山嵐の大村店主、凡の風の杉村店主、Fuji屋の藤谷店主・・・。
そしてさがみや製麺のT部長。
皆が影響を受け触発されたんでしたよね。

それからの札幌のつけ麺の進化はすごかったですよね。

でも、それでもまだその時点では『札幌でつけ麺は流行しない!』とか『あんなものはラーメンのジャンルと認めない』とか『麺とスープを分けただけだろう』とか・・・色んな方が色んな偏見で語っていましたよね。

そんな中、長谷川さんと二人で
「いつか北海道弁で"つけ麺ってなまらうまいべや"なんて皆が言うようになったら楽しいですね!」
なんて話をしてましたっけね。


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それから3年後に開催された「大つけ麺博」
私と同じように長谷川さんも印象強く覚えていてくれたようで、翌年のO.tonの寄稿文でそのことに触れてくれていましたね。

今やつけ麺は完全に市民権を得て、沢山の人が
「○○のつけ麺ってなまら美味いべや」

ってフレーズも普通に聞けるようになりましたね。

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長谷川さん。

あなたの訃報を聞いたのは東京出張中の時でした。

最初は
「まさか(^^;誤報だろう・・・タチの悪い冗談だよなぁ(^^;」

と苦笑いしながら、全然信じていませんでした。

でも、どうやらそれが本当だとわかると、地面が崩れていくような・・・周りの景色が歪むような不思議な感覚に襲われ・・・。
そのままふわふわとした感覚のまま仕事をこなしました。
でもその時はまだ認識できていなかったんでしょうね。
悲しいとかそういう感情がついてこなかったんですよ。

・・・・ようやくそれが事実と認識できたのは夜遅くになってからでした。

年明けにに放映されたテレビ の収録のことを思い出し、
(うそだ!体調が良くなったら屋食ラー麺用に新しい坦々麺を完成させるって言ったじゃないか!!
大丈夫って言ったじゃないか!)

と一人ホテルのベッドで取り乱してしまいました。

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年明け早々から調子がすぐれないことは聞いていましたが、
「薬が変わると副作用で調子が悪いことがあります」
と以前にも話をしていたこともあり、勝手に
「・・・薬が合うまでしばらく辛抱が必要なんだろうなぁ」

程度の認識しかしていませんでした。

長谷川さんには何度か屋食ラー麺用にも限定品を提供していただき、その度にああでもない、こうでもないと言いながら試作を繰り返し、新商品を作っていくのは本当に楽しかったです(^^)

社内試食でも大好評だった坦々麺・・・。
幻の名作になってしまったのが本当に残念です。

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長谷川さん

健松丸をオープンさせたとき試食会に呼んでくださいましたよね。

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ドロドロのスープに初めて出会ったとき、確かにものすごい衝撃を受けました。
もちろん美味しいとも思いました。
でも、これは「プレオープンの余興」的な商品で、てっきり本店と同じメニューが柱なんだと思っていたんですよ(笑)

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「このスープ一本で行く!」
と聞かされたとき、不安な気持ちもありました。

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だって、中毒性のあるスープではあるけど、浸透するには時間がかかりそうだったんだもの。。。。

それでも揺るがない決意を聞いたとき
「やれるところまでやってみたら?だって、万が一ダメだったら本店と同じメニューでやればいいんだし。
この場所で本店と同じ味の商品を提供したら人気店になるのはさほど難しくないんだから」

って私が言ったんでしたよね(^^;;

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それなりに沢山のお店を見てきたし、そのことに対しては自信もありました。
(私が作っているわけでもないのに"自信がある"ってのも変な表現ですね)

決して無責任な発言をした気はありませんが、しばらくの間その発言が長谷川さんや凌真君を後に苦しめることになるとは思ってもみませんでした。

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まずまずの船出を切ったもののその後は「批判」の声も多く苦戦を強いられたことと思います。
それでも、最後までこのメニューを柱にファンを増やし続けたこと・・・。
やっぱりすごいと思います。

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確か、病気の事を聞かされたのは健松丸の船出直前のことでしたよね・・・。
ものすごくショックを受けましたが、心の底では
(でもきっと大丈夫だよね)
と、どこか楽観的に捕らえていたんです。

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その時の私は「健松丸」のオープンの喜びの方が大きかったのが本音なんです。

あまりに呑気でしたね・・・ごめんなさい。


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長谷川さん

健松丸がオープンして半年ほど過ぎた頃でしたっけ?
治療入院中に何度かお見舞いにお邪魔させていただきましたよね。
病院のベッドの上で思った以上に元気そうにしている長谷川さんを見て、ずけずけと今後のことや限定商品の相談をさせていただきましたよね。

「お酒を飲みながら話をするのも楽しいけれど、こういう風にシラフで真面目に札幌ラーメンの未来を語るのも楽しいですね・・・」

なんて呑気なことを言ってしまったこと。
本当にごめんなさい。


何度目かのお見舞いのときにちょうどお会いした奥様がこんな話をしていましたよね。
「息子の凌真がお店で働いてくれるのは嬉しいけど、毎日のように残るドロドロのスープを見て涙を流しているのよ。前の店のままでいてくれたらよかったのに・・・」
と。

その時の長谷川さん・・・。
ちょっとバツの悪そうな顔をしながらも直後に見せた表情。
私は絶対に忘れません。

そう。長谷川さんは無意識かもしれませんが「ニヤリ」と笑ったんです。
あたかも
「捨てるスープを見て涙を流すようになれば一人前だ」
と語っているかのように。

「マンボウさんが言った"この場所で本店と同じ味の商品を提供したら人気店になるのはさほど難しくないんだから"が私の支えですから」
と罪を擦り付けるように言った長谷川さん。
そして再び見せた「ニヤリ」という表情(笑)

結局、私も凌真君も奥様も長谷川さんの手の上でもてあそばれていただけかも知れませんね(^^;

~~
長谷川さん

きっと見てくれていると思いますが、もしかしたらここから先は知らないことかも知れませんね。
長谷川さんは
「万が一の時には誰にも知らせずひっそり葬儀をして欲しい」
と告げていたそうですね。

ある意味長谷川さんらしいなとも思います。
でも・・・無理ですって(^^;

これだけ、札幌ラーメン界に影響を与えたんですから・・・。
山嵐の大村さんやFuji屋の藤谷さんが中心になってお別れ会を開いてくれたんですよ。

札幌ラーメンを支える沢山の店主さんたち、そしてラーメン好きさんやら本当に多くの方が来ていましたよ。
みんな、長谷川さんにお世話になった方々ばかりです。

きっとそのメンバーを眺めながら
「マジですか!」
と言ってたんじゃないですか?(笑)

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あらためて長谷川さんの与えた影響の大きさを実感しました。

変な言い方ですが・・・こんなところでも長谷川さんが
『また人と人をつないでくれたなぁ』
と思った私は不謹慎だったかも知れませんね。

でも、長谷川さんのことだから、そんなことさえも
「お役に立てたならいいです(^^)」
と笑顔で許してくれますよね。


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長谷川さん
今日はまるは健松丸で最後の限定を食べてきました。

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凌真君が一人で考え一人で作った商品です。
その名も「凌真ちゃん冷たいのね(T_T)」だそうです(笑)

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命名はのぶ@テレビ塔ののぶさん らしいですが、凌真君も気に入っていた様子です。
この辺のダジャレ好きはそっくりな親子ですね(笑)

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ネーミングセンスはともかく、味はかなり秀逸な仕上がりになっていましたよ。

動物系スープを使わないスープ・・・。
カタクチイワシ、アゴ、鯛からとっているらしいスープは、動物系を使っていないにも関わらず重層的な味わいでした。

ちょっと今までに無い風味と旨み・・・思わず「貝?」とか思うほど魚オンリーとは思えない厚みがありました。
鯛をあぶって作った香味油らしいですが、このアクセントがとっても効果的に効いていましたよ(^^)

二代目というより、よきライバルとして成長しているように思います。
今後が楽しみですね(^^)

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長谷川さん

今日はまるは健松丸の最後の日でしたよ・・・。

前に書いた
だって、中毒性のあるスープではあるけど、浸透するには時間がかかりそうだったんだもの。。。。
という台詞・・・完全に撤回しなくちゃなりません。

店内はその一杯を求め、人人人・・・。


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長谷川さん…ちゃんと見てますか?

オープン直後はあんなに批判の声が多かったドロドロなスープ…
今日はそれを求めてこんな時間なのに、店の中はお客で溢れ、外にも行列ができていますよ(>_<)

最後の一杯がしょっぱく感じたのは味付けのせいじゃないからね…喉につかえたのはドロドロスープのせいじゃないからね(>_<)
この店内の様子…長谷川さんにも間近で見せてあげたかったなぁ(/ _ ; )



~~~
長谷川さん

あなたの本当にすごいところは、色んなラーメンを作れるテクニックでも、沢山食べてきた経験でも無いように思います。

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「札幌で魚介系スープは流行らない」
と言われる中、魚介の香る中華そばを認めさせ、
「つけ麺は札幌では無理」
といわれる中、つけ麺文化を広め浸透させ・・・
「ドロドロ濃厚スープは無いだろう」
と言われても、それを提供し続けて来た意思の強さにあるのかも知れません。

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そして、魚介系スープにしろ、つけ麺にしろ、自分の持っている知識を惜しみなく提供し、周りの人達をどんどん"巻き込んでいった事"こそがスゴイんじゃないかな。

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巻き込んで・・・って表現が悪いですね(^^;

普段は温厚なのに、どこか「頑な」で「一途」なところ・・・。
そして、いつだって自分のことだけじゃなく、一所懸命な周りの人のことを応援し続けてきた来た姿・・・。

そんな皆の兄貴的存在に皆が惹かれていったんですよね。

結果そんな人と人とのつながりが急速に札幌ラーメンの進化を早めたように思います。

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上の数枚の写真は、麺処まるは健松丸が閉店した後に、我流麺舞「飛燕」で前田店主と凌真君がコラボで作った丸鶏を使ったスープで作った二日間だけの限定商品です。
「我流麺処まるは」ですって(^^)

コラボ・・・と書きましたが、実際には丸鶏のスープの経験が無い凌真君に前田店主が経験を積ませてあげたくてセッティングをしたようなところがあります。

厳しい指導だったみたいですが、
「ものすごく勉強になった!」
という凌真君の笑顔が、なんだか嬉しかったです。

ちなみに味は「鶏の直球勝負」という印象で、素晴らしい味わいでしたよ(^^)

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前田店主の凌真君のために起こしたアクション、そして凌真君の前向きなチャレンジ。
こんなところにも、長谷川さんの残したモノが生きているんですよ。
これからの札幌ラーメンの発展は期待していいと思いますよ。

そう遠くない日に実現するであろう、まるはの再出発も楽しみです!


~~~~
長谷川さん

随分長い手紙になってしまいました。
このところずっとブログも休みっぱなしでした。

なんだかその気になれなくてね・・・。

何が?と聞かれると困るのですが・・・。
もちろん長谷川さんがいない寂しさ、悲しさもありますが、それが理由では無いように思います。

「ブログは楽しく!」と基本的に考えていたのが、長谷川さんの辛さや苦悩をわからず「呑気」にふざけたブログを書いていた自分が情けなく思っていたのかもなぁ・・・。

自分のことなのに、自分でも良くわからないのですが、なんだかその気になれなかったのです。

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でも、そろそろ少しずつまたふざけたブログを明るく書いていこうかな(^^;・・・と思っています。

実は、最近美味しいラーメンや魅力的なラーメンにも結構出会っているんですよ(^^)
そんなことをちょっと自分の記録として残しておいて・・・・。
いつか長谷川さんに会ったら自慢してやろうかなと思っています(笑)

私が長谷川さんの傍に行くのはもう少し先かも知れないし、意外にそんな先じゃないかも知れない・・・。
それは自分にもわからないけど、いつかは必ずまたお会いする日が来ますからね。


今度は二人で「空を眺めながら」ではなく、「下界」を眺めながら、呑気に話をしましょうか。
腕組みしながらぽつりぽつりと・・・あの時みたいにね。

では、またお会いする日まで。。。


「今日の一言」
  自慢する
    その時までの
      ネタ集め



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