men-eiji 「ミニ小説付き」年末特別Ver | 大盛上等!ダイエット挫折日記 in 札幌

men-eiji 「ミニ小説付き」年末特別Ver

2歳年上のEさんは社内のマドンナだった。
小柄な体ながら整った顔の美しさはもちろん、大胆な発想力と斬新でキレのある企画力。
仕事の上でも皆が一目も二目も置く存在。
小さな体からは想像できないような大きなパワーを持っている事を誰もが感じていた。
そして何より彼女の笑顔が人を惹きつけて止まないのだ。



恐らく彼女に恋心を抱いているのは社内だけでも10人は下らないだろう。
取引先や彼女のプライベートの友人知人を入れるといったい何人の人が彼女に惚れているのだろう?
もちろん自分も彼女の魅力の虜になっている社内のその他大勢の一人なわけだ。



いや、「なんとなく」「それなりに」しか仕事をこなして来なかった自分は、その他大勢にもカウントされていないかも知れない。

それでも社内ではある一定の評価は受けていたと思っている。
そしてそんな自分を「それなりに」満足もしていた。



ある日社内で新プロジェクトが発足することになった。
2年かそれ以上かりっきりになりそうな大きなプロジェクトだ。
チーム編成に先駆けて部長から以下のような発表があった。
「社運をかけた新プロジェクトだ。人選から慎重に行きたい。
リーダーにEさん、そのサポートとしてK美さんについてもらうが、残りのメンバーはリーダーのEさんに全権委任をしたい。2ヵ月後に正式メンバーをEさんから発表してもらう」



この大きなプロジェクトの責任者に若い彼女が大抜擢されたことにもちろん異を唱える人は一人もいなかった。
彼女からの挨拶は
「ここから2ヶ月間、改めて皆さんのお仕事を拝見させていただいて仲間を選ぼうと思います」という言葉の他には「身に余る光栄」「ベストをつくします」というフレーズ以外何も覚えていない。

(2ヶ月間の働きで決まる?!)



その時自分は勝手に勘違いしたんだ。
彼女は「他の方の仕事の内容や適正をそんな目線で見たことがないから、今一度皆さんの仕事を学ばせていただくために」と付け加えていたらしいが、そんなことは全く耳に入っていなかった。

(2ヶ月の頑張り『だけ』でオレにもチャンスがあるのか!?)




それからの2ヶ月間、オレは死に物狂いで頑張ったね。
販売助成と販売促進に関連する部署に所属していたのだが、それまで現場になんか足を運んだことなどなかった。
いつだって「机上の理論とインターネットの情報で全てが手に入る」と思っていた。


ところが!だ。

いざ、現場に足を運んでみると、自分が考えた販促物やPOP、ポスターがほとんど使用されていない。
そりゃそうだ。
小さな店だろうと関係なく大判のポスターを送りつけて自己満足していたんだから。

「こういうものを考えるのはわが社だけだろう」という思い込みで作った販促物は何一つ使われることなくレジの下やバックヤードに眠っていた。
代わりに似たようなタイプでちょっとだけセンスが上回っている他社のものが売り場を埋め尽くしていた。



(自分らしくない・・・)
という思いがあったのは本当のところだ。
だが(今は無理をしても仕事に真剣に取り組んでみよう!)という強い思いがあった。



まずは自分の行ける範囲の50店舗ほどに絞り従来の「地域性」や「店舗の広さ」という基本情報だけではなく、「店主や販売員の影響力(指名買いか店員の勧めで購入するか)」「顧客平均滞在時間」など独自のデータベースでお店をカテゴライズしなおすことから始めた。

いくつかのパターンに分類した後、それぞれのパターンに向く販促物を実験的に提案したりした。
とあるカリスマ店長のいる店に、あえて「枠だけで中が空白」の手書き用POPを数パターン提案したところ、思いがけずその店長からは様々な斬新なアイディアが出され、社内検討をした結果、全国に向けての正式販促物として採用されたりもした。



時にライバル会社数社と連絡を取り、共同フェアを開催したりもした。
最初は嫌そうな顔をした他社営業マンも「比較テスト」の互角の戦いでフェアは大いに盛り上がり、予想以上の売り場の活況に大いに喜んでいた。



気がつくと2ヶ月はあっという間に過ぎていた。
死に物狂いで頑張ったのは本当の事だ。
そうは言いながら、心の中にはいつだって
「Eさんのプロジェクトに選ばれたい」という下世話な気持ちがあったのも本音だ。
だが、本気で仕事に取り組むと2ヶ月なんてのはあっという間で、売り上げに直結するような結果を残せたとは言えなかった・・・。



広い会議室に本社スタッフが集められ、件のプロジェクトのメンバー発表が行われた。
結果を出せなかったことで、半ばあきらめつつも、心の底ではなんとしても選ばれたいと願っていた。



迂闊にも自分の名前が発表された時、自分は
(もし万が一選ばれたら・・・もし万が一選ばれたら・・・)
そんな事を考えていて聞き逃してしまっていた。

周りの人の自分に向けられた拍手で、ハッと我に返る始末。



会議室を出ると一人トイレの個室の中で
(やった!やった!やった!)
と小さくつぶやきながらガッツポーズを何度も繰り返した。


その日の帰り、考えていた事を実行に移す事にした。
「あ、あの・・・」
帰りのエレベータを降りてきた彼女を見つけ、後ろから声をかけた。

「あら!新プロジェクトではよろしくね」
「は、はい!そ、それで・・・・できればお祝いをしたいので食事にお付き合いしていただけませんか?」
「お祝い?」クスリと笑いながら彼女は続けた
「これからプロジェクトが始まるのよ。お祝いは気が早いんじゃない?でも、親睦を深めるための食事ならいいアイディアかもね」




あらかじめ予約をしていたお店は自分なんかが足を運んだ事がないような高級なフレンチレストランだった。
サービススタッフが持ってきた写真の載っていないメニューを見てオレは思った。
(これは・・・いったい何語なんだ??)

フランス料理店なのだからフランス語なのだろう。
馬鹿な事を考えたものだが、ルビがふられたそれらを見てもなんのことかさっぱりわからないのだから仕方がない。



「アペリティフはどうなさいます?」

サービススタッフの言葉に
「あ・・・あぺり・・・?」
しどろもどろだ。

彼女が「シェリーで良いわよね?」と助け舟を出してくれなければ危うく
「それじゃあそのあぺりてぃふってヤツください」
って言っていたかも知れない。

分厚い辞書のようなワインリストを持ってきた時には完全に気持ちの悪い汗でぐっしょりだった。
結局彼女がワインから食事までオーダーをしてくれ、何とか食事を済ませる事ができたのだが、その間会話を楽しむどころか、何を話したのかさえ全く覚えていない始末。



すっかり元気を無くした自分を見て、彼女は公園までの散歩を提案してくれた。
オレは公園のベンチに座り冷たい風を浴びてようやく自分を取り戻す事ができたんだ。

「Eさん・・・今日はお恥ずかしいところをお見せしてすみません・・・。自分はご覧の通り、田舎物で食事のマナーひとつ知りません。」

「気にしないで。私は全然気にしていないわ」
「Eさんに少しでも近づこうと思って今日は思いっきり背伸びをしました」
「ありがとう」
彼女はニコリと笑ってくれた。

その笑顔を見た瞬間何かのタガが外れた気がした。

「この2ヶ月の仕事だって、自分らしくもない背伸びをしました。
せっかくプロジェクトに選んでいただいたけど本当の自分はいい加減で、仕事なんかさっぱりできない人間なんです。」


「2ヶ月の行動や結果だけで選んだわけじゃないわ。あなたの持っているポテンシャルとそれを発揮したここ最近の行動力の両方でプロジェクトに入ってもらったの」
「ついでに言うなら・・・・Eさんに認めてもらいたくて・・・選んでもらいたくて、毎日毎日自分らしくない事をやってきました。そんな下心が僕のパワーだったんです!」

すっかり興奮したオレはベンチから立ち上がって、意味不明な熱弁をふるっていた。



そして堰を切ったように続けてしまった台詞。

「ずっとあなたに憧れていました。あなたに合う男になりたいと思っていました。
でもいつだってあなたの周りには自分なんかよりずっとステキな人が沢山いて・・・。
どんなに背伸びをしてもあたなの周囲のステキな男性達には敵いそうもなくて・・・。
そしてそれは所詮背伸びでしかなく、等身大の自分はワインひとつ食事ひとつ注文ができないような情けない男なんです。
あなたにまで恥をかかせてしまい「好き」と思う事自体がおこがましいと思い知らされました」


気がつくと泣きながら「告白」のような意味不明な言葉を口走っていた。



彼女は再びにっこり笑い「光栄だわ」と言いながらゆっくりと立ち上がった
「キリン・・・って知っている」
「え?」
「キ・リ・ンよ!」
一瞬彼女が何を言っているのかわからなかった。
「キリンって・・あの首の長い動物ですか?」
「そう。ついでに言うと首だけじゃなくて足も長いわよ」
「はぁ・・・もちろん知っています」

「キリンの足や首が長いのはどうしてか知っている?」
「え・・・?生まれながらですよね?そういう動物だから?」
「あら。つまらない言葉ね。私は思うの。キリンの祖先は最初は木の上の方の葉を食べるために『背伸び』をしたんだろうってね」

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彼女が何を言おうとしているのかわからなかった

「そして背伸びを続けていくうちに、首や足がどんどん長くなっていった。それこそ何世代もかけてね。」

「は、はぁ・・・」

「それを"進化"って言うのよね。」

「はぁ・・・」
「そして、私は背伸びをしたキリンの祖先がとーってもステキだと思うの」
「えーと・・・何が言いたいのですか?」

「もーう・・・鈍いなぁ、鈍い男は私のプロジェクトにはいらないわよ」

冗談ぽく笑う彼女だったが、
「それは勘弁してください!!」
なんて真剣に答えたのだから今考えると笑ってしまう。

「わかりやすく言えば・・・背伸びをするオトコが好きってことよ」
「え?」
彼女は自分の方に一歩近づき、首に両手を回しかけてきた。

「言っておくけど、私・・・公私はきっちりと分けるタイプよ。それだけはわかっておいてね。」


それが何を意味するのか一瞬良くわからなかったのだが、彼女の香水の香りとともに彼女の唇が近づいてきた・・・。

鈍いオレはその時ようやく、キリンの例えの意味がわかったんだ。

不覚にも目をつぶる事さえ忘れていたオレ。
視界の隅に彼女の足元が見えていた。



背伸びをしたのは今度は小柄な彼女の方だった。



~~~了~~~



ということで、特別Verミニ小説(^^;
ラーメンのラの字も出てこないブログでした(笑)
 
忘年会続きの今年・・・。
2週間14日間で10日間の忘年会。
今日の大晦日は自宅の掃除と決めていたのだが、どうにもこうにもやる気がでない。

現実逃避でブログ(小説?)を書いてみました。


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テーマは「進化」で書いてみました。

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men-eijiの札幌ラーメン進化宣言。

eijiのラーメンの美味しさは今更語るまでもないよね。
でも、そのmen-eijiがさらに先を目指そうとした2013年。

もしかすると最初は「背伸び」や「無理」もあったのかも知れない。



それでも、そういう背伸びが成長につながるんだよなぁ・・・。

そんなラーメンの味以外にも教えてくれたお店でした。
2013年の感謝に変えて・・・。

「今日の一言」
  いつだって
    はじまりちょっと
      背伸びから


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